ゼロ年代研究会

長いゼロ年代(1995〜2011)の社会・文化を研究します。

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

黒田硫黄②‐99年生まれ、90年代・00年代アフタヌーンを語る-

僕が黒田硫黄で一番好きなのは『茄子』だ。 僕はよく『茄子』の話をするのだが、『茄子』はどんな漫画かと聞かれると毎回困る。 連作短編集といえば話が早い。だが、『茄子』はただの短編の寄せ集めではない。登場人物が有機的関係を築いていて、ある短編の…

黒田硫黄①‐99年生まれ、90年代・00年代アフタヌーンを語る-

黒田硫黄とは何者か、という問いを考える。ついついこんな作品を書く人はどんな人なんだろうということを考させられてしまうような天才漫画家だ。 これまで鬼頭莫宏の無常観的な作品世界について書いてきた。 黒田硫黄も無常な作品世界という点では鬼頭莫宏…

ゼロ年代からテン年代にかけてのテレビバラエティ番組の変化についてちょっと考える

僕、ホリィ・センは91年生まれなので、1998~2004年が小学生、2004~2007年が中学生、2007~2010年が高校生であった。 僕が中学生のときに『電車男』が流行っていたわけだが、まさに「オタク」であるというアイデンティティを自分は持っており、「スクールカ…

汎国民的自由恋愛幻想の崩壊・変容とセカイ系 そしてメンヘラ/弱者男性へ…

12/11の記事で筆者はセカイ系の「想像力」の社会的、歴史的な根拠を示したが、これは結局セカイ系において自意識の問題がロマンティックな恋愛との関係において描かれたことの説明をなしえていない。 本稿ではこの問いへの仮説的解答として、セカイ系作家の…

セカイ系の二つの世代

セカイ系を論じるに際して忘れられがちなのが、セカイ系作家に大きく分けて二つの世代が存在していることである。 新海誠、秋山瑞人、高橋しん、鬼頭莫宏らを60年代後半〜70年代前半生まれを第一世代とすれば、西尾維新、佐藤友哉、滝本竜彦ら(とりわけファ…

幸村誠‐99年生まれ、90年代・00年代アフタヌーンを語る-

2022年アドベントカレンダー10日目を書きますちろきしんです。 アフタヌーン特集も、もう4回目。 zerokenn.hatenablog.com zerokenn.hatenablog.com zerokenn.hatenablog.com もうちょっと「アフタヌーン」らしい作家で書くのを予定していた(黒田硫黄とか植…

大塚愛の曲を聴いていた話

これはゼロ研アドベントカレンダー9日目の記事である。ゼロ年代研究会のイデオローグとして肩肘張った文章ばっかり書いてきたが、いい加減疲れてきたので、もっと思いつきで書くことにする。 僕は基本的に音楽を聴くのが苦手というか、音楽を聴いているとイ…

鬼頭莫宏③‐99年生まれ、90年代・00年代アフタヌーンを語る-

飽きもせず今回も鬼頭莫宏の話をしていく。 テーマは「死」だ。鬼頭莫宏作品のキャラクターはいかの重要なキャラであろうとあまりにもあっさりと死んでいく。『なるたる』の最後は驚愕で、突然現れた訳の分からない暴徒の手で雑にキャラクターたちは殺されて…

ゼロ年代内面吐露ブームって本当にあったのか?

この記事はゼロ年代研究会アドベントカレンダー7日目の記事です。 adventar.org 僕、ホリィ・センは前回、ゼロ年代研究会は長いゼロ年代(1995~2011)に固有のエピステーメー(知の枠組み)探しをするのだと述べた。今回話題として挙げたいのは「内面吐露」…

鬼頭莫宏②‐99年生まれ、90年代・00年代アフタヌーンを語る-

今回は鬼頭莫宏の代表作『なるたる』の話をしたい。 前回記事で、鬼頭莫宏には「普通の人の普通の人生」に対する敬意の視点がある、と書いた。 ひるがえって考えてみると、『なるたる』という作品は「普通の人生」の中で誰もが抱くようなトラウマ的経験に寄…

ゼロ年代研究会という「エピステーメー探し」

この記事はゼロ年代研究会アドベントカレンダー4日目の記事です。 adventar.org 僕、ホリィ・センは子どもの頃から歴史が苦手な人間だった。自分が今生きている時代にしかどうも食指が動かない。 そんな僕も、現代との繋がりが感じられて、適切に現代を相対…

鬼頭莫宏①‐99年生まれ、90年代・00年代アフタヌーンを語る‐

鬼頭莫宏には、「パパの歌」という短編がある(掲載は『アフタヌーン』じゃなくて『ヤングマガジン』だけど……。*1 1991年にリリースされた忌野清志郎の「パパの歌」から題を取った一編だ。「パパの歌」の作詞は糸井重里である。 チャラい見た目の夫・隆(たか…

印象 ゆとり世代

ゆとり世代。 この言葉の由来となった「ゆとり教育」は、学習指導要領が1998年に改訂(2002年に実施)され2016年に再度改訂されるまでの10年あまり、詰込み教育を脱し総合的学習や個を重視した「ゆとり」ある教育を掲げていたことから広まりました*1。そして「…

碇シンジではメンタリストDaiGoを止められない――「コンプレックス」概念の変容について

この記事はゼロ年代研究会アドベントカレンダー1日目の記事です。 adventar.org ゼロ年代研究会では「あなたにとってのゼロ年代」をテーマに記事を書いていきます。ゼロ年代に関することを語りたい方はどなたでもアドベントカレンダーに登録して記事をお書き…